もうだいぶ前からAくんの話はしていなかった。
若くして重度のアルコール中毒、その他もろもろで問題を抱えた彼に、ある日ボリスともども電話で罵倒され(もちろん彼は泥酔していたし、私たちは何もしていないのだが)それ以来一切連絡を取るのをやめました。(周りからは「もっと早くからそうすればよかったのに」と言われた。)彼も私たちをひどく罵ったことは覚えていたのか、それともどうでもいいのか、彼から連絡が全くこなくなりました。
ボリスには重度のアルコール中毒者の友達が4人もいる。アル中四天王。。。(って、もう過去に話したかも?)
↑この二人とは色々もめたあとで、連絡を取るのを一切やめた。
3人目はボリスの故郷であるルーアンに住むCくん。
彼とは時々電話で連絡をとるくらいだが、ボリスが電話をするのは絶対に午前中。なぜなら午後にはすでに飲み始めていて手遅れ。泥酔はしていないものの、酔っていると本当にうざいし会話に終わりがなく、ひどい。ちなみに彼女と別れてからいっそう状態悪化。
遠くに住んでいるから普段そんなに交流がないし、いちおうこのまま現状維持。
そして今回話したいのが、4人目のD。
Dは、ボリスの幼馴染だ。小さなころから家族ぐるみで仲良くしていた彼ら。たくさんの時間を共有し、お互いのことは本当によく知っている。Dのご両親ははるか昔に離婚をしていて、お父さんは今も進行形でアル中だ。ボリスは彼の父親のことだけはあまり知らないらしい。でも母親とはとても仲がいい。
私がボリスと付き合うことになってDに始めて会った時から、たしかにお酒は好きな人なんだろうなと思っていた。でもしばらくたってルーアンで彼に会った時、お昼時一緒にスーパーに寄って食材を買おうとしたらすぐに度数の強いお酒を買って一人で飲み始めた。
「これってまさにAくんと同じじゃん・・・」と思ったのは覚えている。
その後も徐々に飲む回数・量が増えていった。その度に彼は恋人を失い、路上で意味のない喧嘩を繰り広げ、しまいには彼のお母さんが救急車を呼び、数日病院に入れられたりもした。
付き合っていた彼女に「今後飲んだら別れる」と言われ、紆余曲折ありながらも今までなんとか持ち越していた。(その間に彼は何度も仕事を変えたが、結局毎回続かなかった。)
で、先週。
毎度のこと、仕事も首になり、彼女から別れを切り出され、彼女の家に居候していた彼はもう住む場所がなくなった。母に助けを求めるも、今回初めて断固として母親は了解しなかった。彼女は飲酒をやめられない息子に飽き飽きしていたし、それでもなんとか回復してほしい・自立してほしいと心から願っていた。だから承諾しなかった。
そこで彼はボリスに電話をかけた。度々Dのことで彼の母親と連絡をとっていたボリスは、起こったことを大体知っていた上で、彼に(今まで何度も飲酒をやめろと話していたが成果が見られないので)最後のチャンスを与えようと思った。もちろん私も了解のもと、私たちはこう提案した。
「ナントに1週間ほど泊まりにきなよ。でも、お酒は一切飲まない約束で。飲んだらすぐルーアンに帰ること。」
実は今わたしたちは今度引っ越すアパートの工事を進めているのだが、Dを1週間泊める代わりにわたしたちの手伝いをしてくれないかと頼んだ。Dは職を転々としていた間に大工の仕事もかじっていたので、プロではないが知識と技術はあるそうなので。
Dは喜んでやってきた。電話越しに「心配すんな!大丈夫だよ!!」とDの威勢のいい声が聞こえた。
昨日。
彼がナントに向かっているであろう時間帯、ボリスの携帯にメッセージが届いた。
「アペロ(食前酒)あるよね?」
私もボリスも、それを読んで目が点になった。(•_•)
目が点になりすぎて、どう返事しようかボリスは相当悩んだ。
何これ冗談?冗談にしても、全然面白くもなんともないし、意味がわからない。
ボリスは「何が言いたいんだ?」と返事を返した。すると
「乾杯しようぜ、いっぱいおごってくれよ!」ときた。
ものすごく嫌な予感。
でも着く直前、わたしたちの住所を確認する電話をくれたのだが、声はいたって普通であった。
そして「着いた」と電話があり、ボリスが迎えに行った。家のすぐそばにいるというので、1~2分で帰ってくると思っていた私だったが、10分が経過した。おかしい。するとボリスから電話で「今Dと合流した。すぐ戻る」とのことだった。
久々にDに会い、さあ一緒にご飯を食べようとした際、一言。
「え?アペロ(食前酒)ないの?」
その言葉に私もボリスも唖然。
すぐさまボリス「ここに来る前、あれほど飲まないって約束しただろう?」
D「大丈夫だってぇー 心配すんなよ!」
私(はぁぁぁ????)
変な空気の中、とりあえず食事をし、たわいもない会話の一つや二つで笑ったりもし、ひと段落終えたところでもう22時頃だった。Dにも明日は6時に起きて工事するよ、と伝えた上で、私は仕事で朝が早いのでもう寝るといい、ボリスはアパートの工事で疲れているしもう寝ると言った。するとDは「えーまだ早いだろう。ちょっと友達に電話したいし、散歩しながらタバコでも吸ってくるわー」といい、私たちに合鍵を貸してくれと言った。15分で戻るというし、そのまま鍵を渡した。彼はいつもの調子で冗談を言いながら家をあとにした。
彼を見送り、玄関のドアを閉めた瞬間、ボリスが私に向かって
「Dがいたから言えなかったんだけど、さっきDを迎えに行ったとき、彼はバーでビールを飲んでたんだ。」
え・・・?
「僕の姿を遠目に見つけたからか、慌ててビールを流し込んで、何事もなかったかのようにこちらに歩いてきた」
!!!!!!!
私、絶句。。
完全になめられている。
完全に嘘をつかれている。
私たちとした約束なんてあったもんじゃない。
再会のその前から、私たちはすでに裏切られていたのだ。
ショックだった。友人の一人といえど、彼はボリスの幼馴染である。
私の中では勝手に「ちょっと特別」な一人で、仲良くしていきたいと思っていた。なのに、である。
彼が家を出発して15分たったころには、私はもう「泥酔状態で帰ってくるD」が怖くて、すごく心配していた。それでも私は疲労のため眠りにつくことができたが、ボリスは全くだった。ベッドに入っても眠れず結局起きて引っ越し準備の続きをしたり、窓を覗いてDがいないか見たり、朝まで本当に眠れなかったそうだ。(そんな中私は爆睡でしたが…)
朝早くに起きた私は部屋を出て驚く。
Dがいなかったのだ。うとうとしていたボリスも起きてきて、昨夜のことを話してくれた。
眠れないボリスは時々窓から外を見ていたのだが、一度Dを見つけた。家に向かって帰ってくるのかと思えば、銀行のATMでお金を下ろし始めた。そしてどこかに消えていったのだった。(この辺にその時間帯まで空いているバーはない。いうまでもないが、いるのは朝まで客を探しているフランス語もろくに話せない娼婦くらいだ。)
私は昨日から何度も絶望の気持ちに苛まれ、ついにそれは怒りに変わっていたし、もうDを受け入れらなかった。裏切られたDをこのまま家に置いておけない。私は仕事にでかけ、ボリスはアパートの工事にでかけた。Dは鍵を持っているし、もう30の大人なんだし、いつ帰ってくるかわからない人をいつまでも待てはしない。
最悪の場合も考えたし、Dを軽蔑しながらやはり心配もした。
結局Dは昼12時頃「今家についた」とボリスに電話をかけてきて、昨日結局どこで何をしていたのか何も明確に話さなかったそうだ。彼曰く「アパートの場所を見失って迷っていた」そうだ。
ボリスはDに「ルーアンに帰ってくれ」と言った。
Dは、せっかく来たのになんでだと怒った。約束を破ったこと云々は彼の中で何も重要性を持たないようだった。というかそのときすでにまだ(また?)酔っていたのだ。そのあと彼は私たちに会うこともなく、しぶしぶ電車に乗って帰った。(ルーアンまで片道112ユーロだったぞ!とボリスに一言残して。)
母親に電話で全てを話したボリスだったが、彼女もとても疲れていた。Dはルーアンに帰る理由として「ボリスとまきこと喧嘩したから。やつらが俺を追い払った。俺は何もしていないのに。なんてやつらだ」と言ったらしい。
Aくんとのことがあって、アル中の友人はもうこりごりだった。
Dを誘う時から私たちは「これが最後のチャンス」と自分達に言い聞かせていたし、万が一事がうまくいかなかったら、Dに会う事はもうやめようと決意していた。私たちの意を決した決断を、面白いくらい、彼はそれをコケにして裏切ってくれたものだ。
こういう話は面白くないし、全くためにならないし、書くのも辛い。
でも、これが現実です。一番辛いのはきっとボリスだと思う。Dがいつか変わることができたらまた会いたいけど、私たちはもう疲れた。
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