2020-06-20

キャロットケーキのおじさん

お昼。
生ハムを入れるだけですべてが美味しくなる。


2ヶ月にわたる外出禁止のことがあって、ケーキ屋さんとかカフェにずっと行っていなかった。フランスの多くのパン屋では店員さんが素手でそのままパンもお金も触るから、それを想像しただけでなかなか足を運べなかったのだ。(今は流石にみんな手袋してると思うけど)


ずっとチーズケーキかキャロットケーキを食べたいと思っていた。で、この間思い切って買いに行ってきた。アートセンターから徒歩で10分くらいに美味しそうなカフェを発見したから。
マスクをして店内に入ると、誰もマスクしてない。。
店員は透明のフレームの眼鏡をかけた洒落た40〜50歳くらいのおじさんだった。おじさんもマスクしてないし、しかも手袋さえしてない。えー大丈夫・・・?


「あのー キャロットケーキ、ありますか?」

「あるよー!店内で食べるの?それともテイクアウト?」

「テイクアウトで。」

「他には?」

「今回はそれだけで。」

「『今回』は?じゃあ次回来るときはチャイ・ティー飲んでみてよ!本場のスパイス使ってて、美味しいよ!」

「そうなんですか。ネットにはキャロットケーキが美味しいって書いてあって、チャイ・ティーのことは書いてなかったと思う」

「(笑いながら)ネットは有る事無い事書かれるからあんまり見ないで。
次回って言ったけど、僕はあと1週間で仕事辞めるから、君が来てももういないと思うけどねー」

「そうなん?っていうかおじさん何で仕事辞めんの?」

「僕ね、写真撮ったり彫刻掘ったりするんで、その仕事に集中することにしたんよ。お金を稼ぐことも大事だけど、人生一度っきりだし、やっぱりやりたいことやろうと思って。」


!!!!
おっさん・・・!!!!
その気持ち、めっちゃわかる、わかるでーーーー!!!!!
(ってわたし関西人じゃないけど笑)



初めてあった人にこれだけ共感することもあんまりないし、はっきり「自分も制作活動してて、つい昨年同じ理由で仕事辞めたヨー」って言おうとしたけど、それはまた今度1週間以内にチャイティー買いに来たときでいいかなって思った。きっと数年前なら確実に、考えもせずに「私も同じですー!」って言ってると思うけど、自分少し成長しました。正直言うと、おじさんが何かの拍子に自分の作品を見せて来て、もしコメントしづらいものだったら困るから、あまり深入りしたくなかったのだ。


でもおじさんには正直に
「おっさん、あんたすごいよ。そんな決断、人はなかなか出来ないよ。勇気がいったでしょう。。。ブラボー!!まじで制作頑張ってね。」
と率直に伝えた。
おじさんは私の真面目な反応に少し驚いていたようだった。



キャロットケーキが美味しかったら、今度はすぐチャイティー買いにくるね、と言ってバイバイした。帰り道自分の状況をおっさんのそれと重ね合わせて色々考えていた。


アートセンターに戻って自分の作りかけていた粘土を見て、一人で笑った。なんじゃこのヒゲ笑 

ちなみに期待しすぎて食べたキャロットケーキは、実はあんまり美味しくなかった(というか美味しかったかもしれないけど、自分好みでは全くなかった)。「うそやん!」と信じたくなかったが、本当に自分的にイマイチだった。がっかり。
だからチャイ・ティーは買いにいかないけど、おじさんには頑張ってほしいなーと思う。多少のリスクを負ってでも、人生を悔いなく楽しもう・やりたいことをやろうとする人を私は心から応援する。




話は変わるけど
私がなんとなく書いたこの顔を、その日たまたまアートセンターに寄ってくれたスタッフCが見て「あ!François Cavannayやんか!」と爆笑していた。
私は恥ずかしながら知らなかったが、シャルリー・エブドの被害者の一人であった。自分が何も考えずに書いたこの髭面の男性がその人にそっくり過ぎて、Cと一緒にめっちゃ笑った。

ケーキはイマイチだったが、いい日だった。

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