2021-01-21

テスト

数日後ソミュールへ車を走らせた私は、めちゃくちゃ緊張していた。絵の具を試したといっても、実際本当にうまくいくのかどうかなんて誰にも分からない。
 
2時間の道のりがめっちゃ遠く感じる。
 
 
 
 
着いたのが14時。
担当の人とプロジェクトの詳細を 一緒に確認。
書類審議の際、私の提案は高評価されたものの「技術的な面で本当に実現可能なのか?」という問いかけが出たそうだ。ところがたまたま審査員の中に一人私のことをよく知る人がおり、その人が私をごり押ししてくれたそうだ。その人は最後に言い切ったらしい、
 
「牧子に不可能はない!」

と。。。
 
 
 
( ꒪⌓꒪)
 
それを聞いて口があんぐり開く私。
私に不可能はないなんて、シラナカッタ( ꒪⌓꒪)
ナポレオンじゃあるまいし!!!
 



こんな話しを聞かされた上での、絵の具のテストなので、どれだけやりにくいか皆さんご察しがつくでしょう。
 
失敗出来ないYO!!!
 
 
「ここ、牧子の好きなように使っていいから!」と用意された場所は倉庫、とても広い場所であった。そこから2時間ほど、もう必死になって絵の具を試すわたし。死に物狂いだよ。
 
一通り終わって写真を撮る。
担当者の人が満足そうだったのでちょっと安心するも、いちおうこのまま数日置いて変化を見る。また緊張しながらの数日。。辛い。
 
結局ナントに向かって車を発進させたのが17時半。夜間外出禁止のための特別許可証も作ってもらって、のんびり運転して帰ってきた。くたくただった。。
 
 
 
 
そして数日後、やっと正式にオッケーの返事をもらったのでした。
 
公に結果が出れば安堵すると思っていたのだけど、自分自身、事の大きさをよく分かっているからか全然安堵出来ずにむしろ前よりストレスを感じている。でもそれは悪なストレスではなく、未来につながっていく良いストレスである。

提出した企画書の中でわたしはこのレジデンスをすることは私にとって「挑戦 défi」である、と書いた。今までの受賞者はみんな40代とか経験が豊富なアーティストたちで、私はかなり若い方だ。しかもこんな大きなプロジェクトをやったことがない。だからこそ挑戦なのであり、リスクも伴う。
 
そんな私を選んでくれた審査員の方をとても「粋」だと思う。ちなみに他のアーティストの企画は遥かに実現しやすいものだったらしい。
 
レジデンスは2月から始まるので、もう本当にすぐ。わくわくが止まらないし不安もベラボーにあるけど、そうじゃなきゃ面白くない。
 
頑張る!
 

15㎏を抱えて

絵の具テストのため、ホームセンターに材料を買いに行った。
 
その日はたまたま車をAに貸しており(彼の車は修理中)そして彼は仕事中。ホームセンターには徒歩でいくことにした。本当は翌日車で行くことも出来たのだけど、なんだかいてもたってもいられなくて、結局アトリエから片道40分歩いた。 
 
私が絵の具に使おうと思っていたのは粉の石灰。それを水に溶かしてそれに顔料を混ぜて使うものが、屋内・屋外どちらにも有効だという話をいろんな人から聞きつけたのだ。
着いて店員さんに聞く。
 
「石灰買いたいんですけど」
 
「石灰は、向かいに行かないとないよ」
 
 
そう、このホームセンターは二つに分かれており、大きな店舗とその向かいにもう一つ。車で直接侵入し、トランクに商品を詰めてそのままドライブスルー的に会計をする場所がある。セメントとかレンガとか、そういう大量に重いものを買う人がいく場所。
 
私はしぶしぶそちらへ行く。
徒歩の人は私だけだ。
 
そこで見つけた店員さんに石灰がどこか聞く。
 
 
「え?石灰で何するの?」
 
「絵の具を作るんです。外壁とかにも有効って言われてて…」
 
「本当?僕このお店で10年くらい働いているけど、一度もそんなことお客から聞いたことないねー」
 
「ネットにいっぱい載ってますよ。これを買う人らはきっとみんなもうみっちり下調べしているんですよ。だからオジさんに聞く必要ないんじゃないかな」
 
「そうかもね。で、きみ徒歩で来たの?ここにある商品は重いものばっかりだよ」
 
「4キロの石灰が買えると、このお店のホームページで見たんだけど」
 
 
店内うろうろ
 
「これか?これは君が探しているものとちょっと違うから、どうかな。君が探しているものは外に置いてある。15キロもするけど」 


まーーーじーーーでーーー



いちおう大きなリュックサックは持ってきてたから可能だけど、15キロってけっこう重いよ。。しかも40分徒歩。
でも私は手ぶらで帰るわけにはいかなかった。決意する。
 
「買います!」
 
あわよくばバスに乗ってアトリエまで行こうと思っていたけど、バス停で調べたらすんごい本数少ないしめっちゃ遠回り。40分歩いた方が早かった。
 
 
 
 
で、
 
 
 
 
め っ      ちゃ 後悔した。。。
 
 
 
 
 
 
 
相当重い。
なんじゃこら
 
肩が痛いし終始泣きそうだった。
なんで明日車で来ることにしなかったんだろ。
でもこの日何もしないっていうのは耐えられなくて。ソミュールにテストしに行く日まで日数が全然なかったから、少しでも事前にテストせねばという気持ちがあったから、辛くなったらそれを考えるようにした。本当に自分は馬鹿者だなーと100万回思った。
 
 
 
 
それでなんとかアトリエに戻って、その日からせっせと絵の具作りのテスト。
 
 
 
続く

審査通ったー

この間話していたコンペ(?)に通りましたー!やったぁぁぁ!!!
 
公にはアーティスト・イン・レジデンス なのだけど、実際は立派なアート・プロジェクト。一次審査に通ったあとは、ファイナリスト4名が各自現地へ食事に招かれ、場所を一緒に下見。そしてプロジェクト企画の書類提出、審査という流れでした。
 
場所はCave Ackermanというところ。Saumurソミュールにあるスパーリングワインの老舗ワインメーカー。
 
9月、知り合いの人から「このコンペに応募しなよ!牧子の作品が絶対ピッタリ合う!」と連絡をもらいました。応募提出期限まであまり日がなかったのだけど、場所があまりに特殊なので一度行って見なきゃと思い、旅行がてら遊びに行ったのでした。
 
実際に足を運んで仰天!!!洞窟があまりに魅力的だったので立ちすくんだ。絶対に何かここで作りたい!と胸が高鳴ってしょうがなかった。
という感じで、このプロジェクトに関しては9月からずっとあーでもないこーでもないと考えていたものでした。


写真じゃ、場所の素晴らしさが全然伝わらないのが残念。本当に壮大で神聖な場所だ。
湿気がすごく自然の光も無い。ゴツゴツしたTuffeauという石灰土で囲まれた異空間。非典型的な空間で展示をするのは本当に本当に本当に難しい。だから使う絵の具も特殊なものでなくてはならないし、光の使い方も考えなければいけない。洞窟の意味と自分の作品をどう呼応させていくか。。ちなみに作品は3年も保存(!)されるので、強固な設営が必須。




たくさんの人に迷惑をかけながら、知恵を借りながら、Aの助けを借りながら、企画書を練っていったのです。
 
提出日前日、あまりにストレスが高まって嫌になり、Aと気分転換に一緒に映画を見ることにしました。1本目、本当に何気なく見た日本映画に、私のプロジェクトで要となる鏡、鳥居、鬼、といった要素が次々出てきた。。あまりに偶然過ぎてAと目を丸くした。悪寒がしたくらい。
そして2本目、これまた偶然選んだ映画に、Ackermanというまさにレジデンスの名前の人物が登場したのでした。これには驚きすぎて私叫んだ。
 
「うそやん!!まじで!!!」

 この時、自然と私絶対このレジデンスやれって言われてるんやわ、と思った。お告げ的な。(今思えば大げさだったけど、でもそう考えでもしないとストレスに押しつぶされそうだった。どうしてもやりたくてたまらなかったから)
 
 
 
そして提出日の時間ギリギリ15分前に企画書提出。
緊張で張り裂けそうな心臓を抱えて1日半過ごしたあと、担当者から電話がかかってきた。
(このとき私はもう落ちたと思っていた)
 
「牧子のプロジェクト、すごく評価が高くて第一候補になりました!」

😭😭😭😭
 
えええええええええええ!!



「けど、第一候補って?つまり私で決まりということではないの?」

「そうなんだけど、牧子が使用するといっている絵の具が本当にTuffeau(石灰土)に適しているか、上手くいくか、試してもらって、それがOKだったらそれで最終決定する、ということになりました」


「!!」



そうなのだ。私はいろんな人に聞きまくって、湿度の高い場所でも有効な絵の具の作り方を指示していたのだけど、実際に試したことはなかった。
このプロジェクトはそもそも大きな予算がついており、そう簡単に失敗されては困るのだよね、だから審査員たちは私に「一度現地に来て試してみて」とお願いしたのだった。


続く
 
コルテオ 太陽光発電