2023-08-26

サン・ナゼール回想⑤

2週間かかると予想していた壁画は5日で完成した。しかも毎日10時(もしくは11時)〜13時、15時〜17時というナイスな時間割。今までいろんな壁画描いてきたけど、これほどまでに体力の消耗が少なかった制作は初めてだった。
この写真、エオルが超巨大に見える笑
毎回、壁画制作でクタクタになって帰ってくる私を見て、 私のパートナーであるジェレミー は口を酸っぱく
「牧子はアシスタントを雇うべきだ」
と言っていた。わたしは「うんそうだね」と言いながらも、1枚の絵を描くにあたって第三者をどう参加させればいいのか分からず、何もしないでいた。(でもいちおう考えてはいた)余程信頼している人じゃないとお願い出来ないと思っていた。
ジェレミーは今ヴァーチャル・リアリティのゲームを作っている。そのためにはプログラマーの力が必要で、完全チームワークなのだ。彼の元でスタージュ(研修)したいという学生がいれば喜んで受け入れるし、彼らに絵のスキャンをお願いしたり簡単なアニメーションをさせたり、グループワークに特化している。だから人の手を借りて制作することの素晴らしさを知っている。
 
今回の壁画制作にはクレーン車が必須だった。本来なら私がクレーン運転の免許を取得して一人で制作する予定だったが時間の関係でクレーン車の運転手を探した。市がたまたまエオルの連絡先をゲット、彼は免許も持っているし何より絵描きだった。彼自身も人の絵を手伝ったのは初めてだったが、小学校に行ってみんなで絵を描いたり、なにより25年も壁画を描く仕事をしているので、かなり有能だった。
 
 
かれが大いに仕事を勧めてくれたおかげで私は全然疲れなかった。(夜ちょっとの疲労感と、クレーン車に1日中乗っていたのでちょっと目眩のような、体が揺れている感じがあるだけでした) スポーツ部あがりの私はなんだか悪いことをした気分になっているが、そういう概念は捨てねば。。
 
エオルとは意気投合したので、もし今後同じような仕事があって、彼を雇う予算がちゃんとあればまたコラボレーションをお願いすると思う。最後バイバイするときに彼が「牧子と僕は、おそらく別の人生ですでに友達だったと思う」 と爽やかに言って去っていった。
完全同意!
 
 
最終日、フランスの兄が車でサン・ナゼールに来てくれた。私の残った絵の具をナントに持ち帰るために。 
ここの滞在の話に花が咲いて、夜二人でコーヒー飲んだ。
翌朝出発。ただナントに帰るだけではつまらないので、市内にあるすべてのNOZに行った。NOZ(ノーズ)とは、知るひとぞ知る、激安量販店?である。売っているものすべてが10ユーロ以下かもしれない、くらい安い。そして本当にいろんなものがありすぎる。場所も倉庫みたい。
照明も暗く、入った瞬間後悔する(笑)でもなぜか行きたくなる。そんな場所です。そこで兄と私は掘り出し物を探すのだった!
そのあとはSaint Brevinに行ってHuang Yong Pingのserpent d'océanを見にいった。数年ぶりに見たけどいい具合に時間を重ねていた。
  

そのあと川俣正のObsevatoireを見に行った。ここは2008年に金沢美大から派遣された時に来て以来。15年ぶり!に来た。

駐車場からすごく歩いた。こんなに遠かったけ?そしてこの日はかなり暑い日だったのだけど、なぜか私も兄もすっかり水を持ってくるのを忘れていた。喉が乾くし日陰がないのでしんどかった。。。
途中でラズベリーを食べながら。水分補給していた。
兄。
そのあと船に乗って川を渡り、
降り立った向かいのバーに駆け込んだ。パナシェ(ビールとリモナード)と水を無言で一気に飲み干す我々。
水分補給まじで大事。なんで考えなかったんだろね
そんなこんなで壁画終了しました!一旦南に帰って、来週またプレスリリースのため、サン・ナゼール舞い戻りますー

サン・ナゼール回想④

たしかこの日は土曜日。翌日の日曜日はクレーン車の使用が禁止されているので、ガッツリめに仕事。
17時に仕事を終了すると、大家さんが
「船でそこらへんを散歩しよう」と誘ってくれた。
私とエオルは喜んでついていく。
子どもの夏休みやん
船というかボート?を車庫から出して車にくっつける。港まで運転して、ボートを外す作業も観察する。初めて見たけど、船を出すことってこんな色んなステップを踏まなければいけないんだな。。。
ボートがめちゃくちゃ揺れるので全然写真など撮れなかった。小一時間色んなところに連れて行ってもらった。最高に気持ちがよかったーーー!揺れが怖かったが。。

そのあとギャラリーMIRAのエヴァとオスカールと合流。
わざわざ会いに来てくれた!
エヴァと一緒に海に入った。

エヴァとエオルは超偶然にも同じ町の出身で、なんとまぁ出てくる出てくる共通の友人の名前たち。なんで今まで会ってなかったのか、というくらい。びっくり!話に花が咲きすぎて、あっという間に21時半をすぎていた。サン・ナゼールは田舎なのでレストランやお店が閉まるのがめちゃくちゃ早い。とにかく食事を出してくれるところを探すと、ポルトガル料理屋を見つけた。仏語もままならぬポルトガル人の夫婦が「もうキッチンは閉めた」という。けれどご好意で料理してくださった〜
翌日は朝ゆっくり起きて、みんなで海沿いを歩いた。

Le Pied, Le Pull-over et le Système digestif
Deware & Gicquel
3つとも大好きだけど、一番足が好き。
私とオスカール。
ちなみにこの私の絵入りのジャケット
ギャラリーMIRAで売ってます〜
嬉しそうな自分。
それにしても日差しが強かったー
エヴァとオスカールが帰ったあと、エオルとマルシェに行った。
生牡蠣12個で5ユーロを二人で半分こ。
白ワイン1杯2ユーロ。
安い。。。
このマルシェもなかなか良い雰囲気で、ここでもエオルは横に座った人らと話しを始め、私も参加した。どんだけ人と話すのがうまいのだ。

そのあとはマルシェで買った食べ物を抱えて、二人で近くの自然公園へ。芝生の上で1時間ほどマジ昼寝。そして水着に着替えて自転車でちょっと遠出、泳いだ。
仕事で来ているなんて嘘のようだった。
壁画が順調に進んでなかったらこんなに思う存分楽しめなかった。楽しかった〜

2023-08-25

サン・ナゼール回想③

この写真、ナントのギャラリーMIRAのお客さんが撮ってくれた。壁の大きさとクレーンの高さもよくわかっていい写真!ありがとう。
 
 
今回描いた壁の向かいには緊急医療輸送サービスがある。
ほぼ毎日そこの人たちと顔をあわせるので、最初から自然と会話をしていた。なにより気になるのは、会社の名前SANSOUCY.(サンスシー)Sans souci (問題ない)と掛けている。
救急サービスが「問題ない」と断言しているのはいいことだよねーと、みんなで笑っていた。っていうか、救急施設がダジャレかよ!!
 
何かあっても「問題ないよ〜!」と笑って言い切るおっさん達、めっちゃ面白かった。しかも絵が進むに連れてとある職員が他の職員に
「ほら、右上にあるやつ、顔に見えるだろう!」とか
「窓の横にあるあれ、鳥に見えるなぁ〜」とか
冗談で絵のアドヴァイスしてくれたり、本当楽しかったなぁ
そして万が一怪我をしても横に 緊急医療輸送サービスがあるっていうのはなかなか安心であった。
 

3日目からは、エオルはほぼクレーン車の運転のみで、絵は私だけ。
最初の2日間、絵が着々と仕上がっていくのは嬉しかったのだが、どうしてもエオルの絵みたいに思えてきて、自分の作品じゃないみたいで複雑な気持ちだった。けれど少しずつ私が手を加えることで自分らしさを取り戻せて最後はホッとしました。。

仕事は大体毎日17時に切り上げて、そのあとは遊んだ。
私一人プールにも行った。(まだしぶとくプール通い続いている)
これはプール横にあるSalle La Soucoupe。スポーツ施設、と訳すのだろうか
 
 
夕ご飯はみんなでここに。
Le trou du cul(けつの穴)ならぬ Le trou du füt(樽の穴)笑!
もうこの名前聞いただけで爆笑してしまう。。
見た目は80年代の寂れたバー、という感じなのだが、なんともまぁ最高なバー・レストランだった。料理はモリモリだし、お店の人もめちゃくちゃ面白くてずっと冗談ばっかり言ってたし。シードルのプレッションが美味しくてずっとそればかり飲んでいた。おすすめです!
あらぬことか、その日宿に帰ったのは午前2時。
エオルは酔っ払った私を見てなんともまぁ嬉しそうだった。おそらく私のような、昔から学校の決まりをちゃーんと守ってきたいわゆる優等生みたいな人がこうやって少し道を逸れて楽しむのを見て嬉しかったんだろう。彼はまさに私とは正反対の性格で、学校の決まりなど一度も守ったことがないような人だ。
そんな私たちがこうして5日間なんともまぁよく意気投合して、色んな話をして(95%下ネタかくだらない話)笑いまくっていたか。10歳も歳違うのにねー
 
翌朝目が覚めたのは朝の10時。
壁画の制作中なのにありえない!ショックで飛び起きたのだが、作業場の責任者は私なので別にそんなことどうでもいいのだ。ゆっくり起きてゆっくり準備して、11時くらいにぼちぼち作業始めましたとさ。

2023-08-23

サン・ナゼール回想②

二日目。
朝起きて二人で朝食をとり、9時半ごろからぼちぼち作業を始めた。

モチーフの大まかな形を、ザッザッとわたしが描いていく。
それをエオルは私の横で見ている。かなり打ち解けていろんな話をしていたけど、やっぱり描いているところをこんなに至近距離で見られるのはなんか気まずい。
なので彼は
絵を見てるか、
曲を変えるか、
踊るか、笑
見知らぬ通行人としゃべるか、
色々暇にならないようにしていた。
 
午前中で全面積の下描き?終えた。
横で彼が(無意識だろうけど)急かすので、めっちゃ急いだ。

昼食後、少しだけ昼寝して作業に戻る。
ここからは再度、別れて仕事する作戦。
彼は上を担当、私は下を担当。
たったの2時間で、彼は私が指定した色や塗り方を忠実に守り、すべての葉っぱやモチーフを塗り尽くした。すげー
壁の面積はおそらく130平方メートルほど。
彼にしてみれば「割と小さめな壁」らしく
お安い御用だ、という感じだった。
 
彼のサイトHeol Art を見ればわかるが、作風は全くちがう。
しかも私は現代アートの世界に分類されるが、彼は違う。強いていうなればストリートアートの世界に分類されるのだろうか。完全に独学。高校を出てからすぐに展覧会をしたり壁画を描いたりして一人前に稼いでいたそうだ。世界旅行中もその場その場で絵を描いてお金にしていたらしい。
 
絵を売ることがどれだけ難しいのか私は知っているので、独学でやってきた彼に敬意。と同時に、同じように「絵を描く」を仕事としているのに、これだけ住む世界が違うものか、と驚いた。
大きな壁画は場合によるが一般的に報酬がよく、彼は現代アートを専門にするわたしの友人らより多く稼いでいた。しかし一方で彼のようなアーティストは、美術館やアートセンターなどの公共機関ではほとんど扱われない。
2つの世界はほとんど全くと言っていいほど混じり合わないのだ。同じように絵を描いているだけなのに。
 
 

2日目の夕方にはもうけっこう完成に近い感じになった。10日以上かかるとおもっていたのでかなり仰天した。。。
 
その日も作業は17時くらいに終了し、前から友人で今はサン・ナゼールに住んでいるロマンとアルメルを呼んで4人でご飯を食べた。エオルがキッシュを作ってくれた。作業が早く、料理もしてくれるなんてまじ助かったーーー
二人に会うのは2年ぶりくらい、もーめっちゃ懐かしいし嬉しかった!
お互いの近況報告とか、私が昔付き合っていた人たちの話とか、たくさん話したー
あーーめっちゃ面白かった。
突然雨が降り出した
制作中は本来、体がくたくたで夜なんて22時くらいには寝ちゃうのに、エオルがあまりに仕事が早いのとそして彼がバーを渡り歩いていろんな人と話をするのが好きなために、毎晩夜遅くまで外を出歩いていた。
お酒を普段飲まない私だけど、今回は少し嗜んで満喫しました。
仕事している感がほとんどなかったぞ

サン・ナゼール回想①

前回の惨事のあとなので複雑な気持ちでSaint Nazaireに向かう8月16日。駅に着くと市の人がちゃんと時間通りに私を待っている。
車に乗り込み現場に向かう。
怒りはもうさっぱりどっかにいってしまっていたし、何もなかったかのように彼女と会話する。びーっくりするくらい普通に。笑 
 
それから二人で絵の具を受け取りに行くと、お店の人がこれまたいい人で。
「牧子の仕事、インターネットで拝見しました。どんな壁画ができるのか楽しみにしてますー!制作過程を見に、営業担当の同僚と一緒に伺いますね」
とか言ってくれる。最高。
 
 
そして、現場に戻るとエオルが到着していた。
エオルは私より10歳ほど年上。奥さんと子ども2人とレンヌ近郊に住んでいる絵描きだ。主に巨大壁画を得意としており、ロープに釣り下がって絵を描いたりもする、絵描きでありパフォーマーでもある。最初会った時びっくりした。彼は背丈が190cmほどあり、しかもすでに絵の具まみれの服で、自分でデコレーションしたカラフルな車の前で気持ちよくタバコをふかしていたから。笑

このおっさんと10日間作業するのか…と、顔は笑っていても内心めっちゃ不安。大丈夫かな。。。
 
 
それから挨拶もほどほどに準備を。すでにお昼の12時ごろだったのであるが私たちは作業を開始した。

まず背景を塗った。「まず背景を塗る」ということを私は普段しないので、こんな方法で大丈夫やろか。。と進めながら思う。クレーン車(しかも乗るところめっちゃ狭い)に二人、その場その場で色を指定し、二人で進めて行く。彼はしきりに「下絵印刷して来てないの?それがあると早いじゃん」 というが、わたしは彼にすでにメールで送っていたし、そもそもこれは最終決定されたものではなく「イメージ」であるとも言っていたので、見せてもしょうがないんだ。
 
1時間半ほど作業してお昼ご飯を食べに辺りを歩くと、時間はすでに遅し。めっちゃ高級なレストランしか空いてなかった。 絵の具まみれの私たちを見ても何もいわず、綺麗なテラスに案内してくれるウエイトレスのみなさん。写真に撮ればよかったけど、私たちが汚すぎてお店の雰囲気に合わなすぎて、私は笑いをこらえきれなかった。
 
わざと日本っぽいピース。
このTシャツは金沢美大のバスケ部のもので、長いこと着てなかった。しかしTシャツを着て作業したのは初日が最後、暑すぎて2日目からはずっとキャミソールだった。サン・ナゼールはもっと涼しいかと思ってたのが大誤算だった。
午後。
2人でクレーン車に乗ると容量が悪いので、私は彼におおまかな色を指定し、エオルは上の部分を、わたしは地上に残って下の部分を進めた。
なんと数時間であっという間に私たちは 全面積を塗り終えた。そのときおそらく16時半くらい。びっくりした。。。通行人の人々もめちゃくちゃ驚いていた。彼はとにかく描くのが早い。私自身けっこう描くの早いと思ってたけど、彼は全然格別。25年もこの仕事をやってきているから容量もいいよね。

 

今回の宿は、壁画を描いているまさにその建物。もちろんエオルも同じ。作業中だけでなく、朝起きて部屋を出ると彼が向かいの部屋にいるという同居生活。朝から晩までずっと時間を過ごした。もし全然気の合わない人だったらどうなってたんだろか。そういうことも含めて、今回のプロジェクトは特別ストレス大であった。
この建物に住む大家さんが私に自転車を貸してくれた。エオルはマイ自転車を家から持って来ていたので、2人で買い物ついでに街をサイクリングすることに。
 
 
 
彼は二児の父でもあり、過去に2年半かけて世界一周をした過去を持つひとなので、あの見た目ではあるがかなり常識人だった。スーパーで食料を買いこむときも、意見があってめちゃくちゃ楽だった〜。

そのあと海に行ってひと泳ぎし、市の人も合流して3人でバーでビールを飲み、また自転車に乗って家に戻ってきた。
 
 
海沿いを自転車で走っていると、なんともまぁ気持ちの良い風を感じる。
2日前はあんなに怒ってどうしようもない気持ちでいたのに、なんとまぁ状況が180度変わった。壁はひとまず背景が塗られひと段落。しかもまだ日は暮れておらず自分は気持ちよく自転車に乗っている。なんてこった。  

エオルが料理してくれた。ガレット激ウマでした!
こんな感じで1日目終了。

2023-08-15

ナント観光

不思議なもので、人間というのはあんなにブチギレても、時間が経てば割とケロッとしてしまうのであった。どうせ2日失っただけじゃないか、と思うようにしている。(しかし実際2日は大きいけどさ)
そうやってすっきり割り切れたのも、すべて兄のおかげ。そして兄の古き良き友人でもあるCと3人でご飯を食べて、全然関係のない話をして爆笑して、いい時間を過ごしたからであった。

この数日、私とフランスの兄はナント観光をしまくった。


日にちは前後しますが、これは日曜日。
Jardin Extraordinaireまで行く。
ここは本当に素晴らしいガーデンで、兄が嫉妬したくらいだ。もちろんこのガーデンの設計をした人も企画担当の人も彼は知っているのだが、あまりに素晴らしくて最後に「自分の庭がしょぼく思えてきた…」と、弱気なことを言い出したくらいだった。びっくり。
確かに美しすぎる!!!
 
そのあとNavibus N2 Bas-Chantenayまで歩く。
たくさん歩いたので休憩。
大きなバー・レストランができていて、この界隈本当すっかり変わったなーと驚き。席数がベラボーに多くて、子連れや大家族にもきやすいところだと思う。

Little Atlantique Brewery
23 Bd de Chantenay, 44100 Nantes
そこから船に乗る。船といってもバスのような公共交通機関扱い。ちなみにナントの公共交通機関は土日は全部無料です。
船の上にも彫刻!
 

乗車時間おそらく10分程度なのだが、この時間が最高。違う国に来たような気さえする、満足感いっぱい
 
船はハンガーバナナに着くので、そこでFRACの展示を見る。友人が仕事をしていたので3人で小一時間だべる。。
 
 
コルテオ 太陽光発電