2012-11-30

人種差別主義のスペシャリスト

木曜の朝、新聞記者による展覧会の取材がありました。

「記者は記者でも、アート系展覧会記事の
 スペシャリスト(!)が来ますから!」

と聞かされていた参加アーティストの私たち。

ほぅ・・・(・o・)




約束の朝11時に展覧会場に行く。
そのスペシャリストとやらもやってきた。
本当に驚いたんだけど、なんとこの記者
最初から ひたすら ものっすごい
態度が悪いのである。



point presseと聞いていたので、作品展示も全く始めてないし
展示の概要などを説明する機会だと思ってた。
ところがそのスペシャリストとやらは
「作品が無いと写真が撮れない、記事にならないじゃないか。なんだこれは」と繰り返す。



今回居合わせたのは私も含め参加アーティスト5人。
うち1人がフランス人(祖父がイタリア人)だけど、その他は純・外国人だ。



とにかく話を始めようと、ペルー人のリカルドが挨拶をした。
しかしそのスペシャリスト、顔をしかめるだけ。
「は?何?」といって全然話を聞こうとしない。


リカルドのスペイン訛りはそりゃ強いけど、
でもフランス人なら、注意して聞けば問題なく理解出来るレベル。
それを彼は理解しようと努力しない。

その態度にカチンときた 私たち残り4人。
最初っから険悪なムード・・・





会議室に場所を移し、5人でそのスペシャリストを囲む。
私ビジョンではもう火花バチバチ(*o*)


展覧会の概要、テーマ、コンセプトなど
リカルドが一生懸命伝える。話は一応進むが、
どこか馬鹿にした感が消えないその記者の態度。


実は私、この記者をよーーーく覚えていた。
2011年の春、美術館の友の会の団体が立ち上げたある展示に参加した際、このオッサンは同じく取材にやってきた。参加アーティストは10人前後。外国人は私のみ。その日はメンバーである友の会メンバーがやってきて、アーティストが各自作品の前でプレゼンをした。(ここでいう友の会とは日本でいうそれとは違い、展示に関わったり金銭的に美術館に支援をしたりする団体)


今でもよく覚えてる。
この記者は私の作品だけほとんど写真も撮らず、質問も一切しなかった。他のアーティストが彼の質問に対し受け答えをしていたのを見ていたので「私もちゃんと答えられるかしら」とドキドキしていたのに、アレ?と拍子抜けしたのをよーく覚えているのだ。

他のアーティストには、作品の横に本人を立たせて写真を撮ったりしていたのに、私には一切関与なし。



その時は「私の作品興味ないんやろな」とそれくらいにしか思ってなかったけど、それを当時同居してたEに話したら「そいつ知ってる!!!」と言われ、「その記者、嫌なヤツで有名だよ」と言われた。
だからもしかして私が外国人だから、こういう対応だったのかなと言うと「可能性は大いにありうる」と。




で、今回その記者に久々に再会したので
最初見た時
「ああーーーーーーー」と思ったのだった。


で、ちょっと おちょくってみたろ、と思って
今回私に質問がまわってきた時
「以前○○の展示でお会いしましたよねーあの時はどうも。よく(あなたのこと)覚えていますよ^^(笑顔)」と言った。(←私すごい嫌味なヤツ!)

相手は ハテ(・_・)? という顔をしていたが、
作品を見せると「あ、思い出した!」とポツリ。



だからといって別に「この、人種差別主義者ーーー!!」っていうわけじゃないけど、やっぱり彼の質問を聞いてすごくイライラした。

まず第一にヤツが問うた質問。 それは
「あなたはアーティストとして生計を立てているのか?」



初めて会った人、よく知らない相手にそんな質問をしますか?
ましてやこちらの職業は「アーティスト」と言っているのに、
じゃー、パン屋さんに会ったら「パンだけであなたは生計を立てているのですか」と質問するんかいな。
アート関係の作り手は皆精一杯やっているし、食っていけるかいけないかが問題じゃないんだ。いいもの作りたいと思って皆頑張っているので、作品だけで食べていけなかったら皆それぞれ知恵を絞ってやっていますよ。

なんで、ソコを最初に聞くのか。ほんとーに意味が分からなくて、ましてやアンタ、スペシャリストでしょ。それを展示を行うアーティスト全員に聞いてまわっとるんかいな。





私たち、母国語の訛りは消せません。
その話にも触れた。(展示のタイトルが"Nouvel accent 新しいアクセント"だからね)

ここぞとばかりに みんな、訛りを駆使して
その記者が話すのを遮って遮って遮って
メキシコ人もペルー人もしゃべるしゃべる!ポーランド人も
(こういうとき本当ラテン系の人、心強い・・・!)
そしたらそのスペシャリストのおっさん、遂に笑った。
少しずつ冗談言うようになっちゃったりして。
きっと、あまりに外国人が訛り無視で喋り倒したからだと思うんだけど、最後急に優しくなったのでした。少し打ち解け始めた。


ただ「どうして国に帰らずフランスに残るのか?」という
爆弾のような質問を落として帰って行った。
感じ良いように、笑って聞いてたけど
まるで「外国人は国に帰れ」と言われているような怖さを隠し持ってた。






なんでこのオッサンがスペシャリストなの?

Ouest France、もっといい人探した方が良いよ!

クリスマス一色

↓もうお店の中にも雪が降るくらい、町はクリスマス一色になりました。
 (↑写真のクマは もちろん首をフリフリ、動く。)



私も相方のボリスも、クリスマスプレゼントを探す日々。
クリスマスは家族でプレゼントを贈りあうのが恒例。きっとフランスに家族がある方は今ごろ一生懸命頭を働かせて悩んでいるんでしょうね。私もボリスも、日々「あれはどう?」「これはどう」と色々議論を交わしています。 そしてけっこうフランス人は皆探し方が本気。。。クリスマス文化の無い私はこの本気度に毎度驚かされます。



Marché de Noëlもいよいよ始まって、vin chaud(ホットワイン)の良い香りが漂いますー
 

アトリエの同居人・ダヴィッド(笑)
アトリエはとても寒い!そろそろ暖房無しもキツイ。
暖房器具買わなきゃ・・・

2012-11-28

Nouvel accent 告知

突然ですが告知です。

 Nouvel Accent という展示に参加します。

7/12/2012 〜 4/1/2013 (vernissage : 7 décembre à 19h)
Espace Cosmopolis,18 Rue Scribe, 44000 Nantes

外国人作家を集めた展示。
参加者はナント在住のアーティストだけではないらしいので、それは興味深い^^
面白い展示になるよう頑張ります。


→これは市役所のホームページ。
やっぱり私の名前間違っとるがな。もう慣れっこだ(・_・)
FURUCHI・・・ I 抜けてます。




展示のオーガナイザーはペルー人のリカ〜ルド。
一昨日彼は私のアトリエに、作品を見にやって来たのはいいけど
ど、
ど、
ど・・・・、


困った。
彼のフランス語、ワカラン!!!!!!(*o*)


彼はフランスに移り住み四年。
奥さんはフランス人だというが、
もう文法めちゃくちゃ、スペイン語の訛りが強すぎて
正直 日本人の私には辛いのである。

でもなんとか私は彼の言うことを理解して
この展覧会で是非成功を収めたいとおもうのだけど・・・



あまりに「え?何?」「今なんて言った?」を
繰り返し過ぎると 流石にペルー人もキレるかなーと思って、
クイズ的な感じで彼の言いたいことを推測して話を進める私。
きっと慣れれば分かるんだろうな。慣れれば。。。



いちおう会話にはなるけど、やっぱ舌を巻く感じの訛りには弱い。




さて、
突如現れた、サーカスのテント!(*o*)
おっきいのと小さいの。
これはLes Machines de l'île(カラクリ象さんが居る所)の前です。
サーカス、、、以前行った時とても楽しんでしまったので
もう一回観に行きたいけど、どうかな?
動物居たりするかな?


キャンピングカーが沢山。
それほど出演者やスタッフも多いのだろうか。
そしてそれぞれ可愛い。



2012-11-26

演劇1 演劇2

ナント三大陸映画祭が先週からやっています。明日で終わり。
昨年はこの映画祭でバイトをしました。
なつかしい。緊張したなぁ


で、今年は特にオファーも来なかったので(残念・・・)
何を見ようかなぁと調べたら想田和弘監督の「演劇1」「演劇2」 というのがあった。平田オリザ氏・その劇団員のドキュメンタリー映画。平田オリザ氏の名前を見てオッと思った。で、色々批評を調べると、あることに気づいた。

1と2、二つ合わせて上映時間 343分。




長っ!(*o*)




そんなん見てられないよ
だって5時間43分だよ。長いよ、上映中お腹空くし


なんて、だらしのないことを思って、
「観に行こうか悩んでいる、長すぎる」と ツイートしたならば
なんとしばらくして想田監督直々に
「あっという間ですから、是非」
と返信が来たのだった・・・



(↓ロワール。夜が長くなりました。)


私はツイッターをあまり利用していなかったし、
なんで登録しているのかな、面白くないし止めようかなーと思っていたけど ここになって一気にツイッターに感謝、有り難みを受けることになる。



というのも、監督に直々そう言ってもらったことで
じゃあ行こうかなと思い直し 観に行ったその映画が
とてもとても面白く「見て良かった」と心から思えたから。



それで、上映前に想田監督がマイクで舞台挨拶。
上映始まります前に、監督がなんと私の横の横に座られた!

ぎゃーなんてこった!と思えば、

そんなこと気にならず。
だって映画を観てて面白くって、笑いまくってしまった。



演劇1と2の間には1時間の休憩があったのだが
2の上映ギリギリに着いた私。ついに監督とお話をする機会を得る。
ミーハー心が邪魔をする・・・こういう嬉しさがマックスに達すると私はどうも喋り過ぎる。沈黙が出来ないくらいに、しゃべりすぎてしまうのできっと「面倒くさい日本人」だっただろうなぁと。
そして後悔していると上映始まる。

全部忘れてまた笑う。面白かった。




 (↓私のアトリエ。最近)
( これ入り口の広い空間)

色々映画について思うことはあるのだけど、
なかなか言葉に出来ないものだ。


私はあまり演劇に興味が無かった。
中・高校時代に行事で観に行った現代舞台演劇なども記憶にあるが
面白かったという印象が 全然無い。台詞もくさいし、いかにも"演技"って感じ。見ていてとても失礼だけど笑ってしまうような感じ。だからわざとらしいというか・・・
(大変失礼なことをいってごめんなさい)


今回上映後、想田監督が話していたが、
近代の日本演劇はヨーロッパから輸入されたもので、台詞も翻訳されたものだから何処か固い。メイクも高い鼻を付けるなど、西洋人に似せたようなものをしていたそうだ。
監督も演劇にはそこまで興味は無かったそう。
平田オリザ氏の作品を見るまでは!


(↓大きくなったなぁ)


想田監督が最後に話されていたことは本当に共感できることばかりで、ビックリしながら聞いていた。
今回演劇1と2を見ながら、私はどれだけ笑ってしまったか。
平田オリザ氏の作る演劇とやらは本当に自然に入って行けて、自分が驚くほどだ。あれはなんでなんだろう





色々とりとめもなく書きました。
本当はもっとしっかり感想を書きたいと思ったんだけども、このままじゃこの興奮を忘れちゃうと思って急いで・・・
金沢のシネモンドでも、12月に上映するらしいです。
確かに5時間43分はお尻が痛くなるけど是非観に行って欲しい作品です。
日本各地40カ所での上映だそうですので、皆さん是非
イメージフォーラムでもやってたみたい

2012-11-23

襲いかかる胃痛

田舎でめいっぱい自然とふれ合って家に帰った
翌日の朝
急に胃が痛くなりベッドから出られなくなった(*o*)





自分で言うのもなんですが、私はとても健康体なので
寝込むような病気は長い間していないのです。これ自慢!(だった)
だから胃痛であれ、なんであれ、こうして日中をお布団の中で
過ごすことは本当に無いに等しい



それが、どうしても痛かった(;_;)
胃に穴が開いてるんじゃないかってくらい 痛かった

日曜日だったので、休日でもやってる医者を探して駆け込もうとも思った。車を持っている友達が医者まで連れて行ってあげると言ってくれたけど、そこまで人に迷惑かけると余計胃が痛くなるわ!と思って有難くお断りした・・・嬉しいね^^
とりあえず様子見でその日は寝ていた。が本当に何も食べられず。

翌日早速いつものお医者さんに電話して
運良く午後イチで予約が取れた。(ラッキー!)





私の個人的な意見ですけど、
「お腹が痛い」と「胃が痛い」は全然違う!

それを医者に言っても、
「わかったわかった、お腹でしょ。最近便秘してない?」
というばかりだ。



「だから、「胃」が痛いんですけど・・・」と強調。
(ほらっ今アンタが押してるトコ、そこ、胃でしょ!!アンタ医者でしょ!)



結局、「んーじゃーストレスかなー 最近悩み事でも?」


か・・・軽い!!(*o*)
軽いよ じーちゃん!






でも医者 ってそんなもんかもしれませんね。
結局お薬をたーんと処方してもらって、ひとまず帰宅。
丸二日間水以外口に出来ないという 私にとっては大事件な一時でした。



数日経って、アトリエをシェアしているダヴィッドに会う。
「どう?良くなった?」 と聞かれ
「まだ胃が万全じゃないけど、大分良いよ」と言うと
「それはよかった!それで、腹痛(ここでも胃と言ってもらえず)の原因はなんだったの」

私、「ストレスやと思う。」



ダヴィッド、「は?・・・なんの(ストレス)???」







(;_;)




人は誰でも悩みの一つくらいあるでしょーが。。
こういうことが言えてしまう人って、ストレス無いんだろうなーと思う。
あっても、きっとストレスって思ってないんだろうな
あっけに取られるわたし。いいな、わたしゃダヴィッドになりたいわ


「っていうか、(腹痛の原因は)それだけ?」



それだけって、十分じゃーーーー!!!!!!(`0´)





彼とは仲の良いので、
「あんたストレスないんかいーー!!」って議論がこの後続くんだけど、

知らない人だったら なんか変な感じになってたかも。



べつに彼の場合は フランス人だからって訳じゃないと思う
悩んでいるフランス人はいーっぱいいますから・・・

2012-11-21

Châteaubriant

農家をしている友人(新婚カップルのアドリアン・オードレ)に、
「実家で豚を裁くから、見においでよ!」と誘われ
相方とChâteaubriant(シャトーブリアン)という
ナントから北東に75kmほど離れた小さな町に一泊してきました。

 ナントからはLilaのバスで1時間50分。片道2.30ユーロ
 (バスだからこんなに時間かかったけど、帰りは車で1時間でした)




結局ブタの裁きは延期になった。
あとで聞くと、ブタが十分に肥えていないから。
この知らせを聞いてちょっとホッとした(*o*)
それにしてもブタが殺されるところなんて、私は見れる自信がないよ!


これはボス↓ (さすがの風格です)

↓ この中のチビ達が、あと数ヶ月後に食べられる・・・
今回の訪問の目的はブタ以外にもあって、それは
アドリアンのご両親に会うことだった。(あとはアドリアンの歳の離れた妹・弟に会うため。彼らは日本が大好きなのだ)

ご両親はトゥールの美術学校出身。今から30年ほど前はどんな感じだったのか、色々面白い話が聞けそうで楽しみにしていた^^


着いてすぐ、お家の周りを散歩。
するとここは千と千尋の世界

光が綺麗でそれだけでも驚きなのに、
この臭い、そりゃ普段嗅ぎません
そして食べ続ける 山羊。
その他は、無音。

長靴必須。



カムラ。
日本人みたいな名前だ!女の子。

 牛もいまっせ
 羊もいまっせ
 するとアドリアン、突如「エデン」なる羊を呼び出す。

「えで〜ん」と呼び続けるアドリアンの図↓
 そしてやって来た!Eden!

このEdenという雌羊は、小さい時にアドリアンの家族と一緒に育ったそうだ。まるで飼い猫のように、家の中で寝て、家の中でご飯を食べていた。普通羊というのは人間から離れ群れになって生活するんだけど、このエデンは違う。
アドリアンが近づくと、
いそいそやって来て私たちにビズをする^^
生まれて初めて 羊をあんな間近に見たけど、
なんか神聖な時間だった・・・
羊ってあんなに美しい動物なのですね
毛並みも綺麗だった。

そして遠くで終始私たちを睨み付けるエデンの父。。。。(*o*)
父怖し!





そのあとはずっと霧、霧、霧で何も見えませんでした
今回私と相方が泊まったのはこのキャンピングカー笑^^
中は暖房がきいててものすご〜く心地が良かった。
そして朝は自然のニワトリ目覚まし付き。
本来ならこのキャンピングカーは馬が引くそうです。





田舎には田舎の忙しさ、難しさ、楽しさ、魅力がありますね。
アドリアンのご家族と共に素敵な時間を過ごしました。


ご両親は本当に感じの良い方々で、気取らない人!
まるで前から知っている人みたいに話をした。(こういうときいつも慣れ慣れし過ぎなかったかな・・・と後悔するのは日本人だからか)
沢山とは言えない、短い時間だったけど
ご両親のおっしゃることに、思うところがありました。
気づけば、息子アドリアン(プラスその嫁)を差し置いて話す私と相方・・・


あぁ、また会いに行きたいなぁ


今回は日本食を食べたことの無いご両親のために
私と相方はいつもの巻き寿司を大量に作ったのですが、
またきっと伺う機会がありそうなので
今度は別のレシピを考えよう。

2012-11-15

Aくんの話 続編

以前Aくんの話をしました。


(植物の山 かわいい)


あれからというもの、しょっちゅうとは言えないまでも
時々彼の様子を見に病院へ足を運びました。


外出許可が出たと思えば、Aくんは食事で出されたプラスチックの容器を自分で割り、それでもう一度手首を切ろうとしたらしい。しかしプラスチックはプラスチック。結局事なきを得た。

そのことがあって、彼は一定期間外出許可を剥奪された。
彼自身なぜそんなことをやってしまったのか覚えていないらしい。
なんてこと(*o*)




しばらく経って、Aくんはアパートを引き払い病院に引っ越すことにした。(入院ではなく完全入居ということ)それで私たちも掃除と引っ越しの手伝いにアパートへ向かった。特別外出許可が出たAくんは感情さえ特に表に出さないもののやはり嬉しそうだった。


アパートは事件以来血だらけだったそう。
だけどAくんの友人Fが大分掃除を進めてくれていたため、私は数滴の血の跡を見るだけだった。




Aくんという人は本当に孤独である。
私はそんな彼に同情をしている。

しかし、その日 私は彼に少し失望させられた出来事が起きた。



相方とFくんが、Aくんの荷物を運ぶため車でアパートを去っていった。残った私とAくんは掃除を続けていた。と、その時。

「マキコ、1ユーロくれないか」と一言。
(Aくんは現在銀行のカードも小銭も持っていない)

何故?何に使うのかと私が訪ねると
少し沈黙が続いて「ビール・・・」とだけ言った。




私はこのとき プツンときた。



彼はアルコール依存症である。しかも重度の。
事件以来当たり前だが病院で彼はお酒を飲んでいない。よくやっている。

お酒を絶つのは簡単ではない。世の中にどれだけそれで苦しんでいる人がいるだろうか。本人だけでなく家族だって、辛い思いをしているだろう。複雑な問題だ。

私はAくんにビールを飲ませるわけにはいかない。アル中を克服すれば、彼は仕事が見つかるかもしれないし、社会復帰出来るだろう。もちろん達成するには険しい道になるだろう。しかしだからこそ、相方と彼を訪問して本を運んだり食べ物を持って行ったりしたのだ。

なのに、その本人から「ビールを買うためのお金をくれ」と言われたのだ。





Aくんは、甘いよ。



私は幻滅したし、そして悲しかった。
彼は自分を悲観・美化している面があるのかもしれない。でも彼を取り巻く全てがそうさせてしまったのかもしれない。それも含めて、本当に悲しい。



「それは出来ない」
 と返事をすると、彼は無言で部屋を出て行き隣の住人に同じ質問をした。

「1ユーロくれ」と。



あとで分かったことだが、彼はその前日にも同じことをした。隣の住人は1ユーロをハイと渡してしまったそうだ。彼はしめたとばかりにビールを即行1本買い、飲み干したそうだ。






何かにつけて彼はよく 私と相方に
 「きみたちは運が良い」と言う。

私はそれがよく分からない。運も大事だけど、それだけで人生は成り立ってないと思うから。Aくんは自分の境遇を全て運のせいにしたいのかもしれない。それほど自分でもどうしようもないのだろう。でもそれは違うよAくん。




彼の辛さを、私はほんの1割も分かってあげられないのかもしれない。彼のどうしようもない絶望的な状況を、いつもヘラヘラ笑ってる私には理解出来ないのかもしれない。

だけど、分かってあげられるよう努力をしている。
だから彼にも私たちのことを分かって欲しいのだ。


それだけ

2012-11-14

お葬式と家族

突然ですが、
週明けから急遽 お葬式に参列してまいりました。

相方のおじさんにあたる方が肺ガンで亡くなりました。
50歳代での若い死。ご高齢になられる本人のお母さんも参列されていて、いたたまれない気持ちになりました・・・



フランスのお葬式に参列するのは初めてだ。
真っ黒の服、どんなの持っていたっけと出発の用意をしていると相方が一言。「主張しない程度の暗い服装だったらいいよ」だって(・_・) 日本はガッツリ黒で決めるイメージがあるけど、こちらはそういうのはこだわらないんだなーと思ってとりあえず出発。(相方父は薄い色のジーパンを掃いていたし、しかしちゃんと落ち着いた格好だった)


オルレアンを経由して、相方父とその奥さんに車に乗せられ
パリ郊外のとある小さな町に到着。



今回お葬式に行くか行かないかとても悩んだ。
亡くなられた相方のおじさんの家には一度泊まりに行っただけで
それ以来連絡という連絡こそは取っていなかったし・・・
それでもやっぱり行こうと決めた。相方のおじいちゃんおばあちゃんにも会いたかった。




お葬式とはいっても、日本のものとは全然違って形式ばっていませんでした。そもそも彼はクリスチャンではなかったので 教会には足も踏み入れなかった。


棺を入れた車と共に、皆で歩いて自宅から墓地まで歩く。
5分くらいの短い距離。ほんとうに沢山の人。彼の交友関係の広さが伺える。
その後皆お墓を囲んで家族や親しかった友人の皆さんがそれぞれマイクで言葉を贈る。その後参列者が土の中に場所を移された棺の上に、花びらを投げいれる。そして土を被せる。


本当にシンプル。
セレモニー感満載の日本のお葬式とはえらい違い。

きっとクリスチャンの人はもっと形式張ったものをするんだろう。無宗教の人でも教会で行う人もいるそうだ。 だから一概には言えないね。


私は正直泣かないかもなぁと思っていたけどそんなことはなかった。
残された奥さん、私と同世代の娘2人や、彼のお母さん、そんな方達を見ているともう耐えられなかったのである。




その後はオルレアンの相方父家に泊まる。
家族全員集まってご飯!

つくづく

55歳って、若いなぁ

と。
今や平均寿命が日本人女性85歳というけども、
改めて思うと 本当に驚きの数字だ。
私は今25歳だけど、順調にいけば85歳まであと60年も生きることになる。60年って・・・25年を2.4回もやらなきゃ!!まだまだ色んなことが出来るじゃんか!(*o*)



 (ナントの黄色)

(ナントで見つけた赤)

翌日ナントにトンボ帰り。



ひと晩しか泊まらなかったけど、私は相方父の家に行くのが大好きだ。日本にしょっちゅう帰れない分、こうして家族感を得られるこの機会にどれだけ癒されているか!!ありがとう


自分でフランスに行くと言ってやってきた身分なので、ホームシックはそれほど人より少ない方なんじゃないかと思ってた。フランス人の友達に囲まれて色々話をしていると意外に大丈夫だ、なんて。でも、やっぱ時々こういう暖かい感じって予想以上に自分をホッとさせてくれるんだわーというのを今回ヒシヒシ感じた。




いつのまにか
お葬式から自分の話になっちゃた



明日も頑張るぞ

2012-11-11

シルクスクリーン

Sérigraphie(シルクスクリーン)のワークショップに参加しました。
 ナントにある Grante égle(グランテーグル)という
本をEditionする活動をしているアソシエーションで行われた今回のワークショップ。

シルクスクリーンを学ぶことを目標に、
一日で参加者10人全員の"共同Fanzine"を作る。


Fanzine(ファンジィンヌ/ファンジン)とはいわゆる印刷された本(雑誌のようなもの)。アーティストやミュージシャンなどアンダーグラウンドで活躍する作り手が、独自のスタイルを探し求め制作する出版物である。バンドデシネ(B.D. ベデ)と少し関係があったりなかったり。Livre d'artisteとも言ったりするかも。



相方はfanzineのコレクションが大好きで、かなりその手の話に詳しい。私も興味があるし、grante égleの人とも仲良くなったし、じゃぁ参加しよう!ということになった。



で、スタートは9時。のはずが
さすがフランス(とはよくいいまずが(´-`))
遅刻する人がいるのは分かって居るんだ。
9時に行っても絶対みんなコーヒーとお菓子でのほほんしてるんだって思って9時5分に着くと、案の定ずばりそうだった(・_・)
3年経ってもこの余裕のある感じが慣れないけど、キリキリしているよりは相当好きだ。

のんびり始まる。まずは各自デッサン。イラストや落書き。

何を思ったか、今回のテーマは Premier baiser(ファーストキス)。
事前に受け取ったメールにテーマも規定サイズも書いてあったから
私も相方もデッサンを用意して持って行ったけど、そういうことをしていた人は他に居なかった。(ちなみにお昼ご飯各自持参って書いてあったのに、私たち以外誰も持ってきて無くてそれも驚いた。結局アソシエーションの人が野菜モリモリスープを作ってくれて皆で食べた。給食のような感じで面白かった)




今回の参加者の皆さんは決してアーティストではない。
言葉や文を載せる人が多くいてビックリした。
(3羽のニワトリの横に「キスして!キスして!キスして!」と描くオッサンが居てかなり衝撃だったが)

全35ページの中身はシルクではなく、普通の白黒コピー。
カバーだけシルクスクリーンで両面印刷。片側それぞれ2色刷り。
金沢美大に居た頃、部活のTシャツを作るのによくシルクをさせてもらったなぁと思いながらの作業。でも技法的なことはあまり記憶にない。なぜなら全て先輩達がやってくれていたから!
最初はものすごく丁寧にやっていた参加者。
でも刷り始めた時すでに午後4時、焦ってみな手抜きになる。
その変化があまりに顕著で笑っちゃった(不謹慎)
刷る、刷る、刷るー!
でも刷ったら終わりじゃない。中身と合わせて巨大ホッチキスでガチャン。その後機械で切りそろえる。

言葉で言うと簡単だけど、作業はなかなか大変。


で、出来た!
終わったのが19時半。長い1日になりましたー


色んなアソシエーションがあって、自分のしたいことが割と思うように出来る環境にあるって、いいよね。

2012-11-08

裁判所でアシスタント

 裁判所でこんな長い時間を過ごすことが来るなんて、予想外でした(*o*)
 数日前、ナントの郊外にある とある現代アートギャラリーで働く知り合いの女性からメールが入った。

「今ギャラリーで進行中のプロジェクトがあるんだけど、
 どうしてもマキコに、今度うちで展示をするアーティストの
 アシスタントをして欲しい。」


ギャラリーで働く彼女と私は仲が良く、もう知り合って3年。
歳は軽く一回り上だし、彼女は今息子を持つお母さん。
もちろん彼女のために出来ることがあるなら、と思って予定も合ったのでOKした。


(いいけど、なんで私なんやろ?)


ぶっちゃけ彼女が私を選んだのは
日本人だし "NO" とは言わない、
日本人だし手先が器用だろう、
という理由だと 思ってた。

(結局後でそんなつまらない理由ではなく 私の作品を見て決めたことらしかった。)



それで、任務の場所は裁判所。
約束の朝8時半に着くも、彼女は来ず・・・
アーティストと私、はじめましてから作業が始まる。
 さて私たちのしたことと言えば、
裁判所に置いてあるベンチの落書きをフロッタージュすること。
 フロッタージュ(frottage)というのは
凸凹面に当てた紙を鉛筆などで擦り模様を写し取る技法。

裁判所の 至る所に置いてあるベンチには
無数に落書きが施されていて、それらはとても凶暴だ。
↓これはほんの一部に過ぎない。
裁判を 待つ間の人々の葛藤や怒りなどが彫られたベンチ。
見た時は少しビックリした。
でもよく見るとふざけていて面白いのもあるんだけど・・・


二日間裁判所に缶詰。
アーティストはレンヌのビエンナーレにも出品している売れっ子アーティストだ!ギャラリーの計らいでこうしてお話が出来たのも面白かった^^
といってもこの短期間じゃふざけた話しか出来なかった(・_・)
 夜の裁判所は重みが増すぜ
 ジャンヌーベル設計のこの裁判所。カッコイイです!

 これは朝。ロワールを見渡す。


 二日目には何故か沢山の人がいるなぁと思っていると、
2010年にSt.Nazaireで起きた殺人事件の重要な裁判がこの日行われたそうだ。

彼女は妊娠8ヶ月の妊婦だった。
殺人を犯したのはなんと彼女の恋人、
包丁で刺した跡が33箇所もあった・・・
私たちが作業する後ろで報道陣(といってもローカルで少数だけど)が弁護士にインタビューしていた。それを聞きながら事件の内容を知ることになって、とても複雑な気持ちがした。

そしてお昼ご飯を食べに外に出ると、裁判所の入り口にMarinaさんの写真がいっぱい飾ってあった。




一方で裁判所の警備員のオッサン達は面白い人ばかりで
暇なのかちょくちょく話しかけに来てくれたり、なんだか心暖まった^^


私は主にビデオ以外はアトリエに籠もって作業するタイプなので、こうして今を駆けめぐるアーティストのお手伝いが出来て本当に面白かった。

そして彼はピシャリと思うことを躊躇わずに言う人であった。
いい人ぶってハイハイ言うタイプの人間に片足を突っ込んでいる私は見習うべき所がいっぱい。展示設営でまた彼に会えるので、今から楽しみにしている。
 
コルテオ 太陽光発電