2020-11-21

Yのパニック発作

ある日の昼、アトリエに付属しているキッチンで
わたしは別のアーティストBとご飯を食べていた。するとまた別のアーティストYがやってきて、わたしらを見るなり
 
「人多すぎやん。外で食べよ…」
 
とぶっきらぼうに言い、中庭へ去っていった。
その日はけっこう寒い日だったので

「4人くらいまでなら全然大丈夫だと思うけど。外は寒いんじゃない?Yも一緒に食べようよ」

と誘っても、Yはトゲトゲしく、頑なに拒むだけだった。
キッチンは15㎡くらい。狭すぎず広すぎず。わたしとBは「ま、いっか」という感じでそのまま食事と会話を続けた。
 
 
 
 
その数時間後、音楽を聴きながらアトリエで作業していたわたしは誰かが泣き叫ぶのを聞いた。その時は子どもだと思った。キョーレツな泣き方だったので1歳くらいの子かな、上に住んでいる人たちかな、と思った。それはしばらく続いたが収まったのでそのまま気にせず作業を続けた。
 
 
しばらくして別のアーティストらと廊下ですれ違ったのだが、彼らから、泣いていたのはYだと聞かされた。
Yは人よりも体重がかなり多く、他の病気も経験しているので体が弱い。だからコロナウィルスに対してそれはそれは敏感になっている。その日キッチンで私たちと食事をしたがらなかったのはそのせいだったらしい。人がすれちがう廊下やトイレでもマスクをしない・キッチンで食事をし終わってもマスクを装着しない私たちを見て、きっと怒りや不満・不安が爆発したのだろう、パニック発作を起こしたというのだ。


それを聞いてわたしはYが発作を起こしたのはコロナのせいだけではないと思った。彼女は前から制作に悩んでいたし、思うように発表の場が持てず苦しんでいた。やっと手に入れた展示の機会も、今回のロックダウンで取り消しになった。仕事もやめてアーティスト業に専念するつもりだったのに全然うまくいかないと非常に悩んでいた。
30歳を過ぎてこのように悩む友人アーティストは多い。中には彼女のようにひどい鬱状態になる人もいる。わたしは彼女がこれほどまでに行き詰まっていたなんて知らず、すごく申し訳ない気持ちになった。
 
 

正直言って私たちのアトリエはいつも人で溢れているわけではない。廊下に出てお手洗いに行っても誰かとすれちがう可能性なんてほとんど0に近い。キッチンも3人集まれば多い方だ。そもそもキッチンにやってきたときYは手を洗っていなかったし(とはもちろん彼女に言わなかったけど…)、きっとナーヴァスになっているのだろう。
 

わたしは翌日Yに会いに行き、素直に謝った。共有空間ではマスク着用を心がけることを約束した。今回の彼女の発作事件を聞きつけたアーティストらがみんな彼女にこうして連絡をしてきたらしく、彼女は「なんかみんなを怖がらせちゃったねー」と言って笑っていたので、少しは気持ちが軽くなったのでは、と思った。
よかった・・・





コロナの影響で身体的に苦しむ人も、
コロナのせいで始まったロックダウンにより職を失ったり活躍の場を失い苦しむ人も、
ロックダウンにより人と会うことが少なくなり人間関係が緩和したという人もいる。



コロナに罹ってめちゃくちゃ苦しんだ友人を知っている。だからコロナをただの風邪、とは全く思わないけど、健康な人のマスク着用やそれに違反した人に罰金を科すことなどには疑問が残る。人は汚れた手でマスクを着用することも多く、着用中何度もそれを触る。1日中着用することで肌がただれる人もいるそうだ。そもそも清潔なマスクを着用しない人もいる。病気の人が着用するのはもちろん理解できるけど、健康な人が着用する意味あるのかな?とわたしは毎日考えている。

 
しかし
装着することでYの気持ちが安らぐのなら、それも一つの利点だろうか。

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