2019-05-22

フランス語の闇

昨日、派遣先のギャラリーで出会ったアーティストたち(ケベック出身のカナダ人とシカゴ出身のアメリカ人)と話をしてて、思い出したことを書きます。今回ちょっと長いです。

(みんなでイタリア料理)

金沢美大で学生をしていた頃、ベルギー人の友達Sが出来た。
彼女は当時市役所で働いており、美大の先生の計らいで知り合った。フラマン語、英語、日本語、そしてフランス語を自由自在に操る彼女。当時私はフランス語を勉強し始めたばかり、外国人の友達が出来たということが、それだけで嬉しかった。



そうとう昔のことなので詳しいことまではっきり覚えていないが、ある日彼女から連絡があった。
「うちでパーティをするから来て!フランス語を話す会。フランス人の友人も来るよ。マキコも一緒にフランス語勉強しよう」


金沢で学生をしていても、なかなか外国人と触れ合うことはほとんど皆無。嬉しかった。とってもドキドキしながら彼女の家に遊びに行った。


ピンポンを押して中に入ると、当たり前だけど外国人ばかり。10人以上はいたかもしれない。
「最近習ったフランス語を試してみるチャンス」とドキドキわくわくしていたのは、その最初の1分だけだった。そこにいた人は皆レベルがめちゃくちゃ高く、普通に問題なく仏語を話している。
全く文法もおぼつかない初心者中の初心者を
好んで相手する人は誰もいなかった。



いや、いた。みんな受け答えはしてくれるのだけど、なんせ話が続かないので皆んな英語を話し出す。でも私は当時本当に英語も全く出来ず、ただひたすらみんなの話に耳を傾けるのみだった。Sも私のお世話ばかりしてられない。
みんなあんなにいっぱい笑って楽しそうなのに、私は全くもって一瞬足りとも楽しくなかった。テキトーに笑って過ごすんだけど、それも辛すぎて最後の方は愛想笑いも出来なかったと思う。




そんなに辛ければ早く帰ればいいものを、なかなか言い出せず、でも勉強になるしなぁとか思って私はずっと残っていた。(本当に私はバカだ)
途中、囲碁を勉強しに留学に来ている仏人の学生と話(ジェスチャーで話?)をしていた。
全然聞きたいことが聞けない。相手も白け始める。彼は日本語を話さない、日本語で言っても全然伝わらない。すごくツマラナイ雰囲気になる。


すると彼が一言、
みんながいる目の前で、堂々と、

「きみ、もっとフランス語勉強しなきゃ。全然分かんないよ」

って言った。
(奇妙にもこのフランス語は完璧に分かった)




その瞬間、
今でも覚えてる。
彼の顔も覚えてる。
どんな言い方で言ったのかも覚えてる。
これでもかってくらい、
正真正銘の嫌味だった。




そして
頭が真っ白になって、
頭の中身が全てズタズタになった。
その場の空気がシーンってなった。






あのね、


そんなこと言われなくても、


誰よりも



分かってる。

あんたなんかよりも、
数億倍、
自分が分かってるっつーの







その日の帰り道、すんごく泣いたと思う。
悔しくて、悔しくて、すんごく泣いた。
同時に、あれだけ真っ正面からハッキリ言われて
ものすごくショックだったのが、
その後の仏語勉強の糧になったかもしれない。

なんて、

当時、私は本当にアホで
その時の言われたことをプラスに考えていた。

最近までは。






それから時が経って私はフランスへ渡り、
美大のマスターを卒業して、
今なおフランスで制作活動を続けているわけだけど、
もちろん語学はいつまで経っても勉強中だ。


ふとある日、
あの日の出来事をふと思い出すことがあった。
色々思い返した。
そしたらすんごく腹が立って腹が立って仕方がなかった。





外国語を頑張って学ぶ人を、よく、
あんな風に人前でけなしたなって。
自分は日本語が出来ないことを棚にあげて
よくもまぁあんな酷い言い方をしたなって。



フランス人がフランス語をとても誇りに思うのは結構だ。間違ったフランス語や変なアクセントで話した時、好意から訂正してくれるフランス人がたくさんいる。それは私のためになるから有難いことだと思ってたし、今も勿論そう思ってる。

でも、
今わたしは恋人がイギリス人だし、期間限定とはいえどカナダにいるということで、英語圏の人と英語を話す機会がものすごく増えているのだけど、

一回も、誰にも、そんな風に訂正されたこと


ない。






私が自分のブロークンイングリッシュにうんざりして
「ごめんね私の英語。めちゃくちゃで」と言っても

「牧子の英語、ちゃんと理解出来るよ。
 間違いなんて気にしないで、続けて」
って言ってくれる。

ジョンにもキティーにもアンディーにもメアリーにもソフィーにもイギリスの他の友達にも、この前トロントで会った人々
誰一人にも
「そこはこういうんだよ」なんて訂正されたこと、「ない」。


ジョンに「もっと正確な英語を話したいから、間違いを訂正してほしい」って言ったことがあるのだけど、彼は
「僕は何も言えない。だってきみは僕の言語を勉強してくれているのに、それを訂正するなんてそんな権利ない。きみの話はちゃんと分かるし、きみの英語は素晴らしいよ」
て。。。
それ言われた時泣きそーーーーになったよーーーまじでー😭😭😭

ちなみに彼は「僕なんて2年も東京に住んでいたのに全然日本語話せないんだよ(ドヤ顔)」笑 ドヤ顔するところじゃない笑
「しかも君はフランス語が話せるんだ。すごすぎる」



声を大にして言いたいが、私の英語は本当にビギナーだしめちゃくちゃだ。日本語っぽい仏語っぽい変な訛りもある。けど何人かの友達に「牧子の訛り、すごく珍しくてなんかめっちゃクール!いいね!」って逆に褒められたことがある。
こんなことって、ある?
信じられないけど、奇跡的にあるのよ。



こういう優しさに触れて初めて、
金沢で見ず知らずのフランス人に言われたことは、全然普通じゃなかったって気づいた。人の努力は絶対に笑ってはいけない。誰にも笑う権利なんてない。
日本ではよく外国人が日本語を話していると、変にモノマネしたりからかう人がいるけど、なんで?その人は頑張って勉強しているんだ、何が面白いんだって思う。



私が今いるケベックの人と話していると、彼ら独特の訛りや言い回しがわからないことがある。同じフランス語と言えど、けっこう違うことがある。
フランス人はよくケベックの訛りをバカにするんだけど、なんでだろう?何が理由でフランス人の話すフランス語の方が偉いんだって思う。


昨日一緒に食事をしたケベックのアーティストが、フランスでレジデンス中「無理やりケベック訛りを直した」って言ってて、本当に悲しい気持ちになった。彼女がなんでそんなことしなきゃいけなくなったかって。本当に悲しい。なんで彼女がそんなことしなきゃいけないの。


っていう一連のことを、昨日初対面の二人と話していた。会話はほとんど英語。でも私のためにゆっくり話してくれたし、すごく楽しい夕食だった。




学生の頃の私に一言言いたいのは、
「そんな酷いこと言う輩は、外国語を真剣に学ぼうとしたことがない人だ。人の努力をバカにする人ほどろくなやつはいない。あなたは外国語を取得しようと勉強し始めた、それだけで素晴らしいのだから、マイペースで頑張って」
かな。



あぁ、
それにしても 今思い返しても、
あの日は辛かったなぁ。。。


英語を学び始めたことによっていろんな世界が広がると共に、(フランス人の話す)仏語の闇にも気付かされます。

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